2008年3月30日日曜日

種を捨てる

私のうちでは梅を自宅で漬けます.梅干ではなくて、カリカリ梅のような「梅漬け」.物心ついた時から食卓で見かける梅は、カリカリだったものだから、給食でやわらかい梅干が出てきた時は子供心にカルチャーショック.梅干は未だに苦手です.

その梅漬けの種なんだけれど、うちでは生ゴミとして出すのではなく、川に流す.なんでそうするのか聞いても、「梅の種は生ゴミに捨てると悪いことが起こると昔から言われてるんだ」と祖母は答えるんですね.理由はよくわかんなくて、迷信みたいなもの.

小さい頃はずっと、なんでだろう?って思っていたのだけれど、学生の頃、宮本常一の『塩の道』という本を読んで、なるほどと思ったことがありました.

今でこそ生ゴミは回収されるけれど、昔はどのうちにも生ゴミを捨て置く“こいづか”というのがあって、多分、“肥え塚”が転訛したものだと思うのだけれど、そこに生ゴミを捨ててました.

人の生命活動に塩が欠かせないのと同じように、動物も塩を欲するわけで、“こいづか”に塩気のあるものを捨てておくと、獣がよってくるんですね.『塩の道』によると、夜ご近所同士で醤油の貸し借りする時は、獣が寄ってこないよう必ず火を灯して歩いたところもあるそう.

今でこそもう絶滅したけれど、かつて日本には狼が跋扈してた時代があったわけで、塩気のあるものを家近くに捨てておくということは人の命を脅かすことに直結してた時代があって、梅漬けの種を川に流す、というのはそこの頃の生きる知恵の名残なんじゃないかなぁ、と思っています.

多分こうした先人の知恵の残滓みたいな、理由はわからないけれども行為が続けられてきたこと、はまだまだ沢山あって、続けられてきた以上、のっぴきならない事情があったはず.そうしたことにちょっとでも気が付けるようになりたいなぁ.そして出来るだけ、記録を残したいなぁ、って思うのです.

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